8月20日午前10時、大人の科学・実験村役人3名と村民2名、計5名は富士山5合目(標高2400m)の山小屋ベランダに集合した。たなびく雲を見下ろしながら、湯本村長は第8回開村宣言を発した。大人の科学マガジンVol.09のふろくはプラネタリウムである。そこで我々もテーマを宇宙にした。遥か彼方の宇宙から飛んで来る放射線を観察する、という。
「それは宇宙線ミューオンだ。正体は電子の200倍ほどの質量を持った素粒子。しかし、その大きさはなんと1兆分の1ミリ以下。電子顕微鏡でも見ることができない極小物質をスグレモノの装置『霧箱』で観察しようというのだから、今回はほんとに凄いぞ!」
…と村長湯本はぶっ放し、独自に開発した高性能な拡散型の「霧箱」を持参してくれた戸田先生を紹介。一礼した戸田先生は、ハゲの金子助役、顎にチョロリと無精ひげの西脇主任の二人に少々の不安を抱きながら、「霧箱」の説明を始めたのである。後にその不安は的中する⋯。
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